広告審査とは?社内の審査フロー・体制・チェック方法と効率化を解説

広告審査とは?社内の審査フロー・体制・チェック方法と効率化を解説

最終更新日:2026年10月7日

広告審査とは、広告の公開前に、表現が法令・媒体ポリシー・業界の自主基準に合うかを確認し、修正・承認・記録まで行う業務です。社内では「依頼→一次チェック→法務・専門家確認→修正→承認→記録・ナレッジ化」の流れで回し、判断基準と履歴を残すことが要点です。景品表示法も、事業者に表示を管理する体制の整備を求めています(第22条)。

広告審査の要点早見表

項目 要点
広告審査とは 公開前に、広告表現が法令・媒体ポリシー・自主基準・自社基準に合うかを確認し、修正・承認・記録する業務
3つの層 ①社内の表現審査 ②媒体(Google・Meta・LINEヤフー等)の審査 ③業界団体の自主基準
主な法令 薬機法、景品表示法、健康増進法、特定商取引法、医療法
最近の制度動向 2023年10月 ステマ規制開始/2024年10月 改正景品表示法施行(確約手続、課徴金の加算、直罰の新設など)
標準フロー 依頼→一次チェック→法務・専門家確認→修正→承認→記録・ナレッジ化
体制の要点 表示の管理担当者を決め、判断基準と審査履歴を残す
よくある失敗 属人化、判断のばらつき、履歴が残らない、代理店・アフィリエイター任せ
効率化の手段 NGワード集、判断基準書、チェックリスト、AIチェックツール、外部専門家

以下で、それぞれの項目を実務の順番に沿って解説します。媒体のプラットフォーム審査には一部触れるにとどめ、社内で審査を回す方法を中心にまとめます。

広告審査とは?社内審査・媒体審査・業界自主基準の3つの層

「広告審査」は法律で定義された言葉ではありません。実務では、主に次の3つの層をまとめて「広告審査」と呼んでいます。

層 誰が行うか 基準 タイミング 結果
社内の表現審査 広告主の法務・表示管理担当、代理店やASPの審査担当 法令・行政のガイドライン、自社やクライアントの基準 公開前(公開後の見直しも) 公開可否の判断、修正指示、記録
媒体審査 Google、Meta、LINEヤフーなどの広告媒体 各媒体の広告ポリシー・掲載基準 入稿時・掲載中 承認・不承認、掲載停止、アカウント停止など
業界団体の自主基準 業界団体、公正取引協議会など 公正競争規約、業界ガイドライン 会員の自主運用、苦情対応時 会員への指導、見解の公表など

3つの層は、基準も責任の所在も別物です。媒体審査に通っても法令に適合しているとは限りません。逆に、法令上の問題がなくても媒体ポリシーで不承認になることもあります。

社内審査は、法令と媒体ポリシーの両方を先回りして確認する役割を担います。なお、ASPとは、広告主とアフィリエイター(成果報酬型広告を掲載するサイト運営者)を仲介する事業者のことです。業界の自主規制機関としては、消費者などからの苦情・問い合わせを受け付ける公益社団法人日本広告審査機構(JARO)もあります。

広告審査が必要な理由

行政処分・課徴金のリスクがある

広告表現の違反には、行政処分や課徴金(違反で得た売上に応じて国に納める金銭)が課されることがあります。

  • 景品表示法:不当表示には措置命令(違反の取りやめや再発防止を命じる行政処分)が出されることがあります。優良誤認・有利誤認表示は、売上額の3%の課徴金の対象です(算定額150万円未満などは除く。第8条)。
  • 薬機法:虚偽・誇大広告(第66条第1項)には、2021年8月1日から課徴金制度が導入されています。課徴金は対価合計額の4.5%です(第75条の5の2、厚生労働省資料)。罰則は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です(併科あり。第85条)。2025年6月1日の刑法改正の施行で、懲役から拘禁刑に変わりました。
  • 健康増進法:食品の健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する表示などを禁じています(第65条)。違反すると、勧告や、勧告に従わない場合の命令の対象になりえます(第66条)。

消費者庁の令和7年度の運用状況(2026年5月28日公表)によると、2025年度の措置命令は13件、確約計画の認定(事業者が申請した是正計画を消費者庁が認めること)は8件でした。課徴金納付命令は10件(計3億3940万円)、指導は388件です。インターネット広告の監視による改善指導も、景品表示法で324件、健康増進法で589件ありました。

2023年10月からステマ規制が始まった

2023年10月1日から、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)が景品表示法の不当表示になりました。根拠は「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)です(消費者庁)。

規制の対象は広告主です。依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は、規制の対象外とされています。2024年6月6日には、ステマ告示にもとづく初の措置命令が医療法人に出されました(消費者庁)。Googleマップの口コミで星5などの投稿を条件に、接種費用を割り引いていた事案です。

2025年度の確約計画の認定8件のうち、4件がステマ告示に関するものでした。SNS投稿、口コミ施策、記事LP、アフィリエイト記事も審査の対象に入れる必要があります。表記の方法はステマ規制の解説記事で詳しく紹介しています。

2024年10月施行の改正景品表示法で抑止力が強化された

令和5年改正景品表示法は、2023年5月17日に公布され、2024年10月1日に施行されました(消費者庁)。主な改正点は次のとおりです(改正法の概要)。

改正項目 内容 条文
確約手続の導入 違反の疑いがある事業者が是正措置計画を申請し、認定されると措置命令・課徴金納付命令を受けない 第26条〜第33条
返金措置の弾力化 課徴金を減額する返金の方法に、電子マネー等も認める 第10条
売上額の推計 課徴金の計算の基礎となる事実を把握できない期間の売上額を推計できる 第8条第4項
課徴金の加算 調査の手続が始まった日(基準日)から遡り10年以内に課徴金納付命令を受け、命令の日以後も違反行為をしていた事業者は、算定率が3%から4.5%(1.5倍)になる 第8条第5項・第6項
直罰規定の新設 優良誤認・有利誤認表示に100万円以下の罰金 第48条
開示要請 適格消費者団体が表示の根拠資料の開示を要請でき、事業者は応じる努力義務を負う 第35条
国際化への対応 送達制度の整備、外国の執行当局への情報提供 第41条〜第44条

直罰とは、措置命令を経ずに直接刑事罰を科せる規定のことです。確約手続は自主的な是正を評価する仕組みです。ただし、調査開始の通知などから遡って10年以内に、措置命令や課徴金納付命令を受けていた場合は対象外です。根拠がないと知りながら表示するなど、悪質・重大な場合も対象外です(確約手続に関する運用基準)。根拠資料と審査記録を日頃から残しておくと、疑義が出たときの事実確認と是正を速く進めやすくなります。

薬機法・景品表示法の主な動き(2021〜2024年)
2021年8月1日
薬機法に課徴金制度を導入
虚偽・誇大広告(第66条第1項)に対価合計額の4.5%
2023年10月1日
ステマ規制の開始
広告であることを隠す表示が景品表示法の不当表示に
2024年6月6日
ステマ告示による措置命令
口コミの高評価投稿を条件に、接種費用を割り引いていた医療法人に
2024年10月1日
改正景品表示法の施行
確約手続の導入、課徴金の加算、直罰の新設など
出典:厚生労働省「課徴金制度の導入について」、消費者庁「ステルスマーケティング」解説ページ・措置命令の公表資料(2024年6月7日)・「改正景品表示法の概要」

媒体アカウントの停止やブランド毀損につながる

媒体側にも独自の審査があります。Googleは、違反の繰り返しや悪質な違反があったアカウントを停止することがあると広告ポリシーで示しています。Metaも、違反した広告の却下や、広告アカウントなどの制限を広告規定で定めています。

広告代理店の株式会社ZEARは、表現の抵触でYahoo!広告のアカウントが停止された経験を語っています。同社は「売上がゼロになるだけでなく、クライアント様からの信頼も損ないます」と振り返っています(導入事例)。また、措置命令は消費者庁が報道発表し、事業者名と違反内容が公表されます。

景品表示法の管理上の措置とは?表示等管理担当者と7項目

景品表示法第22条は、事業者に表示を適正に管理する体制の整備などを義務づけています。この条文は、2024年10月の改正法施行前は第26条でした。具体的な内容は「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(以下、管理措置指針)で示されています。

管理措置指針の7項目 広告審査での実務例
①景品表示法の考え方の周知・啓発 制作担当・代理店向けの研修、NGワード集の共有
②法令遵守の方針等の明確化 審査フローと判断基準書を文書化し、委託先にも示す
③表示等に関する情報の確認 審査時に表示の根拠資料を確認する。アフィリエイト記事も確認対象になりうる
④表示等に関する情報の共有 商品部門・制作・代理店の間で根拠資料と審査結果を共有する
⑤表示等を管理するための担当者等を定めること 審査の責任者(表示等管理担当者)を決め、委託先にも周知する
⑥表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置をとること 公開版の画面、根拠資料、やり取りを保存する
⑦不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応 事実確認→誤認の排除→再発防止の手順を決めておく

広告審査の仕組みは、この7項目をそのまま実務に落としたものと考えると整理しやすくなります。⑤の表示等管理担当者に持たせる権限は、後述の「広告審査の役割分担(RACI表)」で整理しています。2025年度も、この措置に関する指導・助言が34件ありました。その中には、SNS投稿を抜粋した表示について根拠を確認していなかった事例が挙げられています(令和7年度の運用状況)。

広告審査の対象:何をチェックするか

対象 主な確認ポイント 見落としやすい点
LP 効能効果、体験談、Before/After、価格・割引、定期購入の条件 注釈の文字サイズ・位置、強調表示から注釈までの距離
バナー キャッチコピー、画像の印象 画像内の文字、画像だけで効果を暗示する表現
動画 ナレーション、テロップ、映像 一瞬しか出ない注釈や「広告」表記
記事LP 記事風の体裁、体験談、医師などのコメント 事業者の表示であることが明瞭か(ステマ)
SNS投稿・インフルエンサー施策 PR表記、依頼した投稿内容 ハッシュタグに埋もれた「PR」表記
アフィリエイト記事 誇大表現、比較・ランキングの根拠 公開後の書き換え、削除で証拠が残らない
商品パッケージ・同梱物 効能表現、表示義務事項 パッケージ画像をLPに転用したときの表現
申込みフォーム・最終確認画面 分量、支払総額、支払時期、解約条件 定期購入の条件が分かりにくい表示

記事LPとは、ニュース記事やブログのような体裁で商品を紹介するLPのことです。動画の短すぎる表示やハッシュタグに埋もれた表記は、ステマ告示の運用基準でも「不明瞭」な例に挙げられています。

広告審査でチェックする法令・基準一覧

法令・基準 主な対象 審査で見るポイント 規制を受ける人
薬機法 医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器など 虚偽・誇大広告(第66条)、承認前の広告(第68条)、医薬品等適正広告基準 何人も(代理店・アフィリエイターも含みうる)
景品表示法 すべての商品・サービス 優良誤認、有利誤認、ステマなどの指定告示(第5条) 商品・サービスを供給する事業者(広告主)
健康増進法 食品(健康食品など) 健康保持増進効果等の虚偽誇大表示(第65条) 何人も
特定商取引法 通信販売など 表示義務(第11条)、誇大広告(第12条)、最終確認画面(第12条の6) 販売業者・役務提供事業者
医療法・医療広告等ガイドライン 病院・診療所の広告、ウェブサイト 虚偽広告、比較優良・誇大広告の禁止など(第6条の5) 何人も
各媒体のポリシー 出稿する広告とリンク先 禁止コンテンツ、制限付きコンテンツ、編集基準 広告主・代理店(媒体の利用者)
業界の自主基準 業界ごと 公正競争規約、化粧品等の適正広告ガイドラインなど 規約の参加事業者・団体の会員など
自社・クライアントの基準 自社商品・受託案件 ブランド基準、クライアントのレギュレーション 自社・委託先

規制を受ける人は法令ごとに違います。薬機法第66条と健康増進法第65条は「何人も」と定めており、広告主以外も対象になりえます。

消費者庁の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項」も、この点を示しています。虚偽誇大と予見できた場合などには、広告代理店などにも健康増進法の措置をとることがあるとしています。

医療機関のウェブサイトも、2017年成立の医療法改正(2018年6月施行)で広告規制の対象になりました(医療広告等ガイドライン、2026年3月30日最終改正)。公正競争規約とは、業界が表示や景品について自主的に定めるルールです。景品表示法第36条にもとづき、公正取引委員会と消費者庁長官の認定を受けて設定されます(消費者庁)。化粧品では、日本化粧品工業会(旧・日本化粧品工業連合会)の「化粧品等の適正広告ガイドライン」が参照されています。違反事例の全体像は広告表現の規制と違反事例一覧にまとめています。

広告審査の標準フロー(6ステップ)

広告主・代理店・ASPのどの立場でも、基本の流れは共通です。

STEP1 依頼(入稿)
  ↓ 商品区分・根拠資料・配信媒体をそろえて提出
STEP2 一次チェック
  ↓ チェックリスト・NGワード集・AIツールで網羅的に確認
STEP3 法務・専門家確認
  ↓ グレー・高リスクの表現だけをエスカレーション
STEP4 修正
  ↓ 指摘理由と言い換え案を添えて差し戻し → 再チェック
STEP5 承認
  ↓ 承認者・日時・承認した版を確定
STEP6 記録・ナレッジ化
    判断理由と根拠資料を保存し、NGワード集・判断基準書に反映

STEP1 審査依頼(入稿)

依頼の段階で情報がそろっていないと、審査は何度も往復します。依頼票には次の項目を入れておくと判断が速くなります。

  • 商品区分(医薬品・医薬部外品・化粧品・健康食品・雑貨など)
  • 承認・届出の内容(承認効能、機能性表示食品の届出表示など)
  • 配信媒体と公開予定日
  • 表示の根拠資料(試験データ、調査資料、価格の根拠など)
  • クライアントのレギュレーション、過去の指摘履歴

同じ表現でも、商品区分や承認内容によって適否が変わるためです。

STEP2 一次チェック

一次チェックは、明らかなNGを漏れなく拾う工程です。判定は「OK/要修正/要エスカレーション」の3つに分けると、後工程が詰まりにくくなります。指摘には「なぜNGか」と「言い換えの方向性」を必ず添えます。

STEP3 法務・専門家確認

全件を法務に回すと、法務がボトルネックになります。次のような案件だけを回す「エスカレーション基準」を決めておきます。

  • 新しい商材・ジャンル、新しい効能効果の訴求
  • 「No.1」「最安」などの強調表示、他社比較、二重価格
  • 体験談、医師などの推薦、Before/After
  • ステマの懸念がある施策(インフルエンサー、口コミ、記事LP)
  • 過去に行政や媒体から指摘を受けた表現

STEP4 修正

修正版は版番号を付けて管理し、どの指摘にどう対応したかが分かるようにします。修正で別の問題が生まれていないか、修正後も必ず再チェックします。

STEP5 承認

承認者、承認日時、承認した版(ファイル名やURL)を記録します。承認後に画像やコピーを差し替えた場合は、差し替え部分を再審査します。

STEP6 記録・ナレッジ化

公開版の画面、根拠資料、判断理由、制作側とのやり取りを保存します。管理措置指針も、表示の根拠となる情報を事後的に確認できるよう、資料の保管などを求めています。判断した内容はNGワード集や判断基準書に反映し、次の審査で使える形にします。法改正や媒体ポリシーの更新、アフィリエイト記事の改変に備え、公開後の見直し時期も決めておきます。

広告審査の役割分担(RACI表)

RACIとは、業務ごとの役割を4つに分けて整理する方法です。R=実行する人、A=最終責任を持つ人、C=相談を受ける人、I=報告を受ける人を指します。

業務 広告主の事業部・マーケ 広告主の法務・表示管理担当 広告代理店・制作会社 ASP 外部専門家
判断基準書の策定・更新 C A/R C I C
根拠資料の準備 A/R C I I −
広告の制作 A C R − −
一次チェック R(自社制作時) A R R(アフィリエイト記事) −
グレー案件の判断 C A/R C C R
最終承認 C A/R I I −
記録・保存 R A R R −
公開後の見直し・是正 R A R R C

これは一例で、会社の規模や取引形態に合わせて調整してください。管理措置指針は、表示等管理担当者に自社の表示への監視・監督権限を持たせることを求めています。表示の作成を委ねる場合は、委託先への指示・確認権限も必要です。小規模な事業者では、代表者を担当者と定めることも可能とされています。

広告審査でよくある失敗と対策

失敗1:特定の担当者に審査が集中する(属人化)

よくあるのが、詳しい人に審査が集中するケースです。株式会社ワンスターは、新卒研修で薬機法の基礎を学んでも、OK・NGの判断は研修だけでは足りなかったと話しています。審査リーダーを立てた結果、その人に業務が集中したそうです(導入事例)。

株式会社ブリーチでは、案件数の急拡大で審査が大幅に増えました。一部の担当者に作業が集中すると、対応が遅れる状況だったといいます(導入事例)。同社は、事業部のニーズと法務のニーズを両立させることを課題に挙げています。

対策:判断基準を文書化し、一次チェックを誰でもできる状態にします。専門家の判断はグレー案件に絞ります。

失敗2:担当者によって判断がばらつく

広告・LP制作の株式会社SARUCREWでは、ベテランライターに「その人に聞かないと分からない」状態でした。判断が揺れて、後から修正が必要になるケースもあったそうです(導入事例)。ASPの株式会社レントラックスも、担当者ごとにやり方が違い、チェック項目が曖昧だったと振り返っています(導入事例)。

対策:判断基準書に「OK例・NG例・理由」をセットで載せ、迷った事例を追記していきます。

失敗3:修正履歴や判断理由が残らない

チャットやメールで修正をやり取りすると、なぜその表現にしたのかが後から追えません。行政や媒体から問い合わせがあったとき、根拠を示せなくなります。レントラックスでは、クライアントのレギュレーションが個人のナレッジに依存していました。審査ツールを導入した後は、審査時点のデータが履歴に残り、異動時の引継ぎが楽になったと話しています。

対策:審査依頼から承認までを1か所で管理し、版・判断理由・承認者を残します。

失敗4:代理店・アフィリエイター任せにする

「制作は代理店に任せているから」は通用しません。消費者庁の健康食品の留意事項は、表示内容の決定を他者に委ねた広告主も「表示をした事業者」に含まれるとしています。アフィリエイトサイトの表示内容を具体的に認識していなくても、関与したと評価されれば広告主が措置の対象になります。

広告主と代理店・アフィリエイターの規制範囲
広告主
商品・サービスを供給する事業者
・景品表示法の対象(ステマ規制も広告主が対象)
・表示の決定を代理店などに委ねても対象
・アフィリエイト記事も、関与と評価されれば対象
・薬機法・健康増進法も対象
代理店・アフィリエイター
制作会社・ASPなど
・薬機法第66条・健康増進法第65条は「何人も」が対象
・健康増進法の措置は、虚偽誇大と予見できた場合など
・景品表示法の対象は原則として広告主
・共同して供給と認められる場合などは対象になりうる
出典:消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」、e-Gov法令検索(薬機法・健康増進法)

対策:契約で指示・確認権限を明記し、公開前の審査提出を条件にします。公開後のパトロールと表示の保存も決めておきます。

広告審査を効率化する方法

NGワード集は「理由と言い換え」をセットで整備する

NGワードだけを並べたリストは、言い換えで迷う時間を減らせません。理由と言い換えの方向性をセットにします。

表現例 なぜNGになりやすいか 言い換えの方向性
健康食品で「飲むだけで痩せる」 食品で痩身効果をうたうと、医薬品的な効能効果と判断されるおそれがある。消費者庁も「摂取するだけで…劇的に痩せる」を明らかに虚偽誇大と疑うべき例に挙げている 痩身効果をうたわず、成分・内容量・味など事実ベースの特徴を伝える。機能性表示食品は届出表示の範囲内で表現する
化粧品で「シミが消える」 化粧品で表現できる効能の範囲を超え、医薬品的な効能と受け取られるおそれがある 化粧品の効能の範囲(医薬部外品は承認された効能の範囲)に戻して表現する
大量のハッシュタグの中に「#PR」を入れる ステマ告示の運用基準が、ハッシュタグに埋もれさせる表示を「不明瞭」な例に挙げている 「広告」「PR」などの文言を、見やすい位置と大きさで明瞭に表示する

適否は、商品区分・承認内容・表示全体の印象で個別に判断されます。表現別の詳しい例は薬機法のNGワード一覧を参考にしてください。

判断基準書(社内レギュレーション)をつくる

NGワード集が「個別の表現」なら、判断基準書は「考え方」をまとめたものです。次の内容を入れておくと、担当者が変わっても判断がぶれにくくなります。

  • 商品区分ごとに表現できる効能の範囲
  • グレー表現の扱い(どこまで自社で判断し、どこから専門家に回すか)
  • 媒体別・クライアント別の追加ルール
  • 根拠資料として認める資料の条件

チェックリストで一次チェックを標準化する

一次チェックの観点をチェックリストにすると、経験の浅い担当者でも抜け漏れを減らせます。本記事末尾の「公開前チェックリスト」をたたき台に、自社の商材に合わせて項目を追加してください。

AIチェックツールで一次チェックを自動化する

案件数が多い場合は、AIチェックツールで一次チェックを自動化する方法があります。たとえばアドミルは、LP・バナー・動画をAIがチェックし、NG表現の指摘と代替案を示します。企業・クライアント・商材ごとのレギュレーション管理や、誰がいつどう判断したかの記録にも対応しています。

導入企業では、次のような変化が報告されています。

  • ブリーチ:担当者の業務が「広告審査に10割」から「8割、他業務に2割」に変わり、審査ラリーの回数も減った(事例)
  • レントラックス:URLを入れるだけで数分で指摘箇所がまとまり、新人や契約社員でもすぐ使えるようになった(事例)
  • ZEAR:導入後の直近半年間、媒体審査での審査落ちが一度もなかった(事例)

いずれも各社の個別の結果で、同じ効果を保証するものではありません。AIは網羅的な一次チェックに強い一方、商品区分や表示全体の印象を踏まえた最終判断は人が行います。ChatGPTなど汎用の生成AIを一次チェックに使う場合のプロンプト例と限界は「ChatGPTで薬機法チェックはできる?」で解説しています。ツールの選び方は薬機法AIチェックツールとは、景表法の観点は景表法AIチェックとはで解説しています。

外部専門家は「高リスク案件」に絞って使う

弁護士や薬事の専門家は、グレーな表現の法的評価や行政対応に強みがあります。一方で、ZEARが「弁護士確認には数日かかります」と話すように、全件依頼では時間とコストがかかります。新商材の立ち上げ、判断基準書の監修、行政から指摘を受けたときなどに絞ると効果的です。

内製・外注・ツールの比較

観点 内製(社内担当者) 外注(弁護士・薬事の専門家など) AIチェックツール
費用の考え方 担当者の人件費・教育コスト 相談件数や顧問契約などに応じた報酬 月額などの利用料(料金体系は製品により異なる)
スピード 担当者の稼働状況しだい 回答まで日数がかかることがある 短時間で一次結果を得やすい
判断の深さ 自社の商品・ブランドへの理解が深い 法的評価、グレー判断、行政対応に強い 網羅的な一次チェックに強い。最終判断は人が行う
判断のばらつき 担当者の経験に左右されやすい 専門家ごとに見解が分かれることがある 同じ基準を一律に適用しやすい
ナレッジの蓄積 仕組み化しないと個人に残る 社外に蓄積されやすい 履歴機能があれば社内に残せる
向いているケース 商材・案件数が少なく、基準が固まっている 新商材、新しい訴求、高リスク案件 案件数が多い、複数人・複数社で審査する
注意点 属人化、異動・退職のリスク 全件依頼は時間とコストがかかる 誤検知や見落としはゼロではない

どれか1つで完結させるより、組み合わせるのが現実的です。たとえば「ツールで一次チェック→社内担当が判断→高リスク案件のみ専門家」という分担が考えられます。

広告の公開前チェックリスト

前提の確認

  • □ 商品区分(医薬品・医薬部外品・化粧品・健康食品・雑貨など)と承認・届出の内容を確認した
  • □ 配信媒体の広告ポリシーを確認した
  • □ 自社・クライアントのレギュレーションを確認した

表現の確認

  • □ 効能効果の表現が、商品区分で認められる範囲に収まっている
  • □ 「No.1」「最安」などの強調表示に、客観的な根拠資料がある
  • □ 体験談・Before/After・医師などの推薦が、効果の保証と受け取られない
  • □ 注釈(打消し表示)が、強調表示の近くに読める大きさで表示されている
  • □ 価格・割引・期間限定の表示が事実と一致している

表示義務・ステマの確認

  • □ 通信販売の表示事項(価格、送料、支払時期、引渡時期、返品・解約の条件など)がそろっている
  • □ 最終確認画面に、分量・支払総額・解約条件などを表示した
  • □ SNS投稿・記事LP・アフィリエイト記事に「広告」「PR」などを明瞭に表示した

プロセスと記録の確認

  • □ 指摘に、理由と言い換えの方向性を添えた
  • □ グレーな表現は、法務または専門家に確認した
  • □ 承認者・承認日時・承認した版を記録した
  • □ 公開版の画面と根拠資料を保存した
  • □ 公開後の見直し時期を決めた

広告審査に関するよくある質問(FAQ)

Q. 広告審査と媒体審査の違いは何ですか?

広告審査(社内審査)は、自社が法令や自社基準に照らして表現を確認するものです。媒体審査は、Googleなどの媒体が自社ポリシーに照らして掲載の可否を判断するものです。媒体審査に通っても、法令に適合しているとは限りません。

Q. 広告代理店やASP、アフィリエイターも責任を問われますか?

薬機法第66条と健康増進法第65条は「何人も」を対象としているため、問われる可能性があります。景品表示法の対象は原則として広告主です。ただし、他の事業者と共同して商品を供給していると認められる場合などは対象になりえます。

Q. 小規模な会社でも審査体制は必要ですか?

景品表示法第22条の管理措置は、規模にかかわらず事業者に求められています。ただし管理措置指針は、規模や業態に応じた措置でよいとしています。代表者が表示を管理している場合は、代表者を担当者と定めることも可能です。

Q. 審査記録はどれくらいの期間保存すべきですか?

管理措置指針は、商品が一般消費者に供給されうると合理的に考えられる期間、確認できるようにすることを求めています。アフィリエイト広告では、リンクから商品を購入できなくなるまでの期間に加え、商品の特徴に応じた合理的な期間が例示されています。他の法令で保存期間が決まっている場合は、その期間も考慮します。

Q. AIチェックツールだけで広告審査は完結しますか?

一次チェックの抜け漏れを減らし、スピードを上げるのには有効です。ただし、適否は商品区分・承認内容・表示全体の印象で個別に判断されます。最終判断は人が行い、グレーな表現は専門家に確認する体制をおすすめします。

Q. ステマ規制では、インフルエンサーも処分されますか?

消費者庁によると、規制の対象は広告主で、依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は対象外です。そのため広告主は、投稿内容の確認と「広告」「PR」などの表記の徹底を、自社の審査に組み込む必要があります。

まとめ

  • 広告審査は、社内審査・媒体審査・業界の自主基準の3つの層で考える
  • ステマ規制(2023年10月)と改正景品表示法(2024年10月)で、違反時のリスクは大きくなっている
  • 景品表示法第22条と管理措置指針が、社内の審査体制づくりの土台になる
  • フローは「依頼→一次チェック→法務・専門家確認→修正→承認→記録・ナレッジ化」
  • 属人化と履歴の欠落を防ぐには、判断基準書・チェックリスト・ツールを組み合わせる

アドミルは、LP・バナー・動画などの広告表現を、薬機法・景表法などの観点からAIでチェックするサービスです。指摘の理由と代替表現の提示、レギュレーション管理、判断履歴の記録まで、広告審査の一次チェックと記録の仕組みづくりを支援します。社内の審査フローを見直したい方は、アドミルのサービスサイトをご覧ください。

参考資料