ChatGPTで薬機法チェックはできる?プロンプト例と限界、専用ツールとの違い

ChatGPTで薬機法チェックはできる?プロンプト例と限界

最終更新日:2026年10月7日

ChatGPTなどの生成AIは、薬機法チェックの「一次チェックの補助」には使えます。ただし、単体で最終判断に使うのは危険です。理由は、①商品区分や承認・届出の内容を知らない、②根拠の条文・通知を誤って示すことがある、③同じ文章でも回答が揺れる、の3点です。

【早見表】生成AIで薬機法チェックするときの向き・不向き

やりたいこと 生成AIの向き・不向き 使い方のポイント
広告文からNG候補を洗い出す ◯ 向いている 見落とし防止の「たたき台」にする
言い換え案を複数出す ◯ 向いている 採用前に効能の範囲内か人が確認する
商品区分・承認内容に照らした判断 △ 情報を渡せば補助は可能 承認書・届出の文言を入力しないと一般論になる
画像・動画を含む広告全体の判断 △ 苦手 写真・テロップ・音声の見落としが起きやすい
根拠となる条文・通知の提示 × うのみは危険 e-Gov・厚生労働省の原文で必ず確認する
最終判断・判断の記録 × 向かない 人が判断し、記録を残す

生成AIは「論点を広く拾う」作業は得意ですが、「この商品でこの表現を出してよいか」を決める作業には向きません。以下で理由と具体的な使い方を説明します。

ChatGPTで薬機法チェックはできる?「一次チェックの補助」までと考える理由

薬機法(医薬品医療機器等法)の広告規制の中心は第66条です。第1項は次のように定めています(e-Gov法令検索)。

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

ポイントは「明示的であると暗示的であるとを問わず」という部分です。NGワードが含まれているかどうかだけでなく、表示全体から何が伝わるかで判断されます。薬機法の全体像は「薬機法とは?読み方・対象商品・NG表現を簡単に解説」で整理しています。

理由1:判断の前提になる「商品区分・承認内容」をAIは知らない

同じ表現でも、商品区分(医薬品・医薬部外品・化粧品・食品など)と承認・届出の内容によって、使えるかどうかが変わります。

厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」は、承認等が必要な医薬品等について、承認等を受けた効能効果の範囲を超える表現を禁じています。化粧品は、通知で定められた「化粧品の効能の範囲」(いわゆる56効能)が広告できる範囲です(医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等)。

たとえば同じ解説には、次のような違いが示されています。

  • 医薬部外品(薬用化粧品)では、作用機序(成分が効果を生む仕組み)によっては「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」も認められうる。広告できるのは、その製品が承認を受けた範囲に限られる
  • 化粧品の効能の範囲にあるのは「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」で、範囲外の薬理作用による効能効果は表現できない
  • 化粧品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」は、日本香粧品学会の「化粧品機能評価ガイドライン」に基づく試験等で効果を確認した場合に限られる

化粧品で範囲外の効能を訴求したい場合は、効能の範囲内の表現に寄せるか、事実に基づくメーキャップ効果・使用感の訴求に切り替えるのが言い換えの方向性です。

AIは、あなたの商品が医薬部外品か化粧品か、どんな承認を受けているか、試験をしているかを知りません。入力しなければ一般論で答えるしかありません。化粧品の効能の範囲は「化粧品広告の薬機法NG表現と言い換え一覧|56効能の範囲」で一覧にしています。

理由2:根拠の条文・通知を「それらしく」誤って示すことがある

生成AIは、文章として自然な続きを確率的に組み立てる仕組みです。法令データベースを引いて答えているわけではありません。そのため、存在しない通知名、ずれた条番号、古い基準を、もっともらしく示すことがあります(いわゆるハルシネーション)。

提供元もこの限界を明示しています。OpenAIの利用規約は、機械学習の確率的な性質から、事実と異なる出力が生じうるとしています。そのため、出力を唯一の情報源や専門家の助言の代わりにすべきでないと定めています。必要に応じて人が確認するなど、出力の正確性は利用者が評価する必要があるという立場です(OpenAI 利用規約、2026年1月1日発効版)。

また、モデルは一定の時点までのデータで作られています。Web検索などで参照しない限り、その後に出た通知や行政処分は反映されません。

理由3:同じ文章でも回答が揺れ、判断の記録が残りにくい

確率的に文章を作るため、同じ広告文を入れても、聞き直すと指摘の数や結論が変わることがあります。担当者ごとにプロンプトも違えば、判断はさらにばらつきます。

一方、行政側の解説は、違反広告かどうかを事例や文面だけで形式的に判断すべきでないとしています。各種の要素を総合的に考慮して判断する必要があるという考え方です(前掲「解説及び留意事項等」)。媒体の性質、広告全体の構成、文脈まで含めて見るということです。チャット画面の回答だけでは、この総合判断の過程を組織として説明しにくくなります。

生成AIでできること・苦手なこと【薬機法チェック】

区分 内容 理由(仕組み)
得意 NG候補の洗い出し(効能の断定、保証、最大級表現など) 典型的な言い回しのパターンを拾うのは得意
得意 言い換え案を大量に出す 文章の書き換えは生成AIの基本機能
得意 長いLP原稿から効能に触れた箇所を抜き出す 要約・抽出は得意
得意 チェック観点や社内説明文の下書き 一般的な論点の整理はできる
苦手 商品区分・承認・届出内容に応じた判断 入力されない前提は知りようがない
苦手 画像・動画が伝える意味の判断 写真の印象、テロップ、音声を通しで見るのは見落としが出やすい
苦手 最新の通知・処分事例の反映 学習時点以降の情報は検索しない限り入らない
苦手 判断の一貫性 同じ入力でも出力が揺れる
苦手 根拠条文・通知の正確な引用 実在しない名称や条番号を作ることがある

ここでの「得意」は、あくまで候補を出す作業です。「苦手」の側は、どれも最終判断に直結する部分です。

画像については、生成AIに画像を添付して質問できるサービスもあります。一方で医薬品等適正広告基準は、図面・写真等による表現にも制限を設けています。承認外の効能効果を想起させるものや、効果が出るまでの時間を保証するものは認められません(前掲「解説及び留意事項等」)。ビフォーアフター写真や浸透イメージのように「言葉にしていないが伝わる」効能は、テキスト中心のチェックでは漏れやすい部分です。

薬機法チェックに使えるChatGPTのプロンプト例【コピペ可】

ここからは、ChatGPT・Claude・Geminiなどで使えるプロンプト例を4つ紹介します。【 】の部分を書き換えて使ってください。

プロンプトを使う前に用意する3つの情報

入力する情報 例 なぜ必要か
商品区分 医薬部外品、化粧品、一般食品(いわゆる健康食品)など 区分で使える表現の範囲が変わる
承認・届出の効能効果 承認書・届出の文言をそのまま 範囲を超えているかの基準になる
媒体 LP、SNS投稿、検索広告、動画など 文字数や見え方、画像・音声の有無が変わる

特に承認・届出の文言は、要約せず原文のまま渡すのがポイントです。要約すると、AIが範囲を広く解釈してしまうおそれがあります。

媒体を問わず、次の3要件をすべて満たすものは広告に当たると判断されます(薬事法における医薬品等の広告の該当性について、平成10年9月29日 医薬監第148号)。SNS投稿やアフィリエイト記事も例外ではありません。

  • 顧客を誘引する(購入意欲を高める)意図が明確である
  • 特定の医薬品等の商品名が明らかにされている
  • 一般人が認知できる状態である

どのプロンプトも「最終判断は人が行う」前提で書いています。AIに合否を決めさせず、論点を出させることが目的です。

①一次チェック用プロンプト

あなたは日本の広告表現を確認するアシスタントです。
以下の広告文を、薬機法(医薬品医療機器等法)と医薬品等適正広告基準の観点から一次チェックしてください。
食品・雑貨の場合は、医薬品的な効能効果を標ぼうしていないかも確認してください。
最終的な適否は社内の担当者・専門家が判断します。あなたは論点の洗い出しだけを行ってください。

# 前提情報
- 商品区分:【医薬品/医薬部外品/化粧品/医療機器/一般食品(いわゆる健康食品)/機能性表示食品/雑貨 から1つ】
- 承認・届出の効能効果:【承認書・届出の文言をそのまま貼り付け。一般食品・雑貨は「なし」】
- 媒体:【LP/SNS投稿/検索広告/動画のテロップ・ナレーション など】
- 想定する読み手:【例:一般消費者・30代女性】

# 広告文
"""
【ここに広告文を貼り付け】
"""

# 指示
1. 承認・届出の効能効果の範囲を超えるおそれがある表現を、原文のまま抜き出してください。
2. それぞれ「なぜ問題になりうるか」を1〜2文で説明してください。
3. 論点の種類(効能効果の範囲超え、効果の保証、安全性の保証、最大級表現、医師等の推薦、体験談など)を示してください。
4. 根拠の法令・通知を挙げる場合は名称と条番号を書き、確信がないものは「要確認」としてください。存在が確かでない通知名や条番号は書かないでください。
5. 「問題なし」と断定しないでください。指摘がない場合は「指摘なし(人による確認が必要)」と書いてください。
6. 前提情報が足りず判断できない点は「判断材料不足」とし、追加で必要な情報を挙げてください。

②言い換え案を出すプロンプト

以下の表現について、薬機法上のリスクを下げる言い換え案を3つずつ出してください。

# 前提情報
- 商品区分:【 】
- 承認・届出の効能効果:【 】
- 媒体:【 】

# 言い換えたい表現
- 【表現A】
- 【表現B】

# 条件
- 承認・届出の効能効果(化粧品の場合は化粧品の効能の範囲)に収まる表現にしてください。
- 効果の保証、「必ず」「絶対」などの断定、治療・予防を連想させる語は使わないでください。
- 各案に「元の表現から何を変えたか」を1文で添えてください。
- 範囲内に収める言い換えが難しい場合は無理に作らず、使用感・香り・使い方など効能以外の訴求に切り替える案を出してください。
- 採否は人が判断します。言い換え案が安全だと断定しないでください。

言い換えの考え方は「薬機法のNGワード一覧|言い換え表現と広告例」もあわせて参照してください。

③商品区分を指定するプロンプト(化粧品の例)

これから化粧品の広告文をチェックします。次の前提ルールに沿って判断してください。

# 前提ルール(社内で一次情報から転記したもの)
- 化粧品の効能効果として広告できるのは、厚生労働省通知の「化粧品の効能の範囲」に限られる。
  該当しうる効能:【通知から該当する効能を転記】
- 事実に反しない限り、メーキャップ効果(例:小じわを目立たなく見せる)や使用感(例:清涼感を与える)は表現できる。
- 「乾燥による小ジワを目立たなくする」は、所定のガイドラインに基づく試験等で効果を確認した場合に限る。当社の確認状況:【済/未】
- 自社基準:【例:「アンチエイジング」は使わない】

# 商品情報
- 商品区分:化粧品(医薬部外品ではない)
- 媒体:【 】

# 広告文
"""
【 】
"""

# 指示
- 前提ルールの範囲を超えるおそれがある表現を抜き出し、どのルールに照らして問題になりうるかを示してください。
- 前提ルールに書かれていないことは推測で判断せず「要確認」としてください。

医薬部外品なら承認書の効能効果を、前提ルールに書きます。一般の健康食品なら「医薬品的な効能効果を標ぼうしない」ことを書きます。

商品区分ごとに「前提ルール」に書くこと
医薬品・医薬部外品
承認・届出の内容が基準
・承認書・届出の効能効果を原文のまま書く
・承認等を受けた効能効果の範囲を超えて広告できない
・要約するとAIが範囲を広く解釈するおそれ
化粧品
化粧品の効能の範囲(56効能)
・通知の「化粧品の効能の範囲」から該当する効能を転記
・範囲外の薬理作用による効能は表現できない
・メーキャップ効果・使用感は事実に反しない限り表現できる
・「乾燥による小ジワを目立たなくする」は試験確認が条件
一般の健康食品
いわゆる健康食品
・「医薬品的な効能効果を標ぼうしない」と書く
・疲労回復・体力増強・老化防止なども医薬品的な効能の例
・標ぼうすると原則として医薬品とみなされる
・栄養補給・健康維持の表現は当たらないとされる
出典:厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」、厚生省「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」をもとに作成。どこまで許容されるかは表示全体で個別に判断されます

健康食品でこの前提を置くのは、厚生労働省の「医薬品の範囲に関する基準」があるためです。口から摂取する物で医薬品的な効能効果を標ぼうするものは、原則として医薬品とみなされます(無承認無許可医薬品の指導取締りについて、昭和46年6月1日 薬発第476号)。医薬品とみなされると、承認前の医薬品の広告を禁じる第68条の問題にもなりえます。同基準は、疲労回復・体力増強・老化防止なども医薬品的な効能効果の例に挙げています。

一方で同基準は、栄養補給や健康維持などに関する表現は医薬品的な効能効果に当たらないとしています。言い換えの方向性は、効能をうたわず、栄養補給の範囲の表現や、原材料・味・飲みやすさなど商品特性の訴求に切り替えることです。ただし、どこまで許容されるかは表示全体で個別に判断されます。

④チェック結果を表形式で出させるプロンプト

以下の広告文の一次チェック結果を、次の列を持つ表で出力してください。

| No. | 該当箇所(原文のまま) | 論点の種類 | なぜ問題になりうるか | 確認すべき根拠(法令・通知名と条番号。不確かなら「要確認」) | リスクの目安(高/中/低/判断材料不足) | 言い換えの方向性 | 人が確認すべき点 |

# 前提情報
- 商品区分:【 】
- 承認・届出の効能効果:【 】
- 媒体:【 】
- チェック日:【YYYY-MM-DD】

# 広告文
"""
【 】
"""

# 条件
- 1つの表現に複数の論点がある場合は行を分けてください。
- 表の下に「このチェックで確認していないこと」(画像、動画、リンク先、注意書きの見え方など)を箇条書きで書いてください。
- 最後に「本出力は一次チェックであり、最終判断は人が行う」と1行で書いてください。

表形式にすると、社内のチェックシートに貼り付けやすく、確認漏れも見つけやすくなります。

出力を読むときのコツ

  • 「指摘なし」は「問題がない」ではありません。 AIが見つけられなかっただけです。
  • 同じプロンプトを別の会話で2〜3回実行し、差分を見ます。 指摘が出たり消えたりする箇所は、判断が分かれやすいグレーな表現です。人が重点的に確認します。
  • 「要確認」とされた根拠は、必ず原文を開いて確かめます。 次の章の方法で検証します。

生成AIで薬機法チェックするときの注意点

機密情報・未発表商品の情報を入力する前に

発売前の商品名、処方、承認申請中の情報、取引先の広告原稿などを入力する前に、使うサービスの学習利用の設定と、社内規程を確認してください。2026年10月4日時点の主要サービスの公式案内は次のとおりです。

サービス 個人向けプラン 法人向けプラン
ChatGPT(OpenAI) 「設定」→「データコントロール」→「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、新しい会話は学習に使われない。一時チャットは学習に使われないが、安全上の理由で最大30日保持される場合がある Business・Enterprise・Eduなどのワークスペースの内容は、デフォルトで学習に使われない
Claude(Anthropic) Free・Pro・Maxは、会話の学習利用を許可した場合などに学習に使われる。Incognitoチャットは学習に使われない Claude for Work、APIなど商用製品の入出力は、デフォルトで学習に使われない
Gemini(Google) 人間のレビュアーが会話の一部を確認することがある。「アクティビティの保存」をオフにすると以降のチャットはモデル改善に使われないが、72時間は保存される Google Workspaceの生成AIでは、許可なくモデルの学習に使われず、人間によるレビューもされないと案内している

出典:OpenAI「ChatGPTのデータ管理」、Anthropic(個人向け)、Anthropic(商用製品)、Gemini アプリのプライバシー ハブ、Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ

設定は変わることがあるため、使う前に各社の最新の案内を確認してください。表のとおり、設定をオフにしても一定期間は保存される場合があります。GoogleはGeminiの案内で、レビュアーに見られたくない機密情報は入力しないよう求めています。

見落としやすいのが評価ボタンです。OpenAIは、学習をオフにしていても、回答に高評価・低評価を付けるとその会話全体が学習に使われる場合があるとしています。Anthropicも、評価ボタンでのフィードバックは会話全体を最長5年保存し、学習に使う場合があるとしています。Googleも、「アクティビティの保存」がオフでも、フィードバックを送った場合は学習に使われうるとしています。業務の会話では評価ボタンを押さない運用にしておくと安全です。

入力時は、商品名を「商品A」に置き換える、未発表の成分名を伏せるなど、判断に不要な情報を削ってから貼り付けましょう。

出力は一次情報で検証する

AIが示した根拠は、次の一次情報で確認します。

AIの出力に含まれるもの 確認先
薬機法の条番号・条文 e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
医薬品等適正広告基準、関連通知 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」に掲載の通知
化粧品の効能の範囲、医薬部外品の効能効果の範囲 医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)
健康食品の表現が医薬品的かどうか 無承認無許可医薬品の指導取締りについての別紙「医薬品の範囲に関する基準」
健康食品の健康増進法・景品表示法上の扱い 消費者庁「健康増進法(誇大表示の禁止)」に掲載の留意事項

確認先にない通知名が出てきたら、実在しない可能性を疑います。判断に迷う表現は、都道府県の薬務担当部署に相談する方法もあります(例:東京都保健医療局「薬事関係 事業者の方」相談窓口)。相談の対象や方法は自治体ごとに異なります。

AIの指摘を受け取った後の確認手順
1
差分を見る
同じプロンプトを別の会話で2〜3回実行し、指摘が出たり消えたりする箇所を重点確認する
2
根拠を原文で確かめる
条文はe-Gov法令検索、通知は厚生労働省のページで原文を確認。確認先にない通知名は実在を疑う
3
人が採否を決める
AIの指摘は候補として扱い、一次情報で確認してから採用・不採用を決める
4
記録を残す
各指摘の採否とその理由、確認した一次情報のURLと確認日を残す
「指摘なし」は問題がないという意味ではなく、AIが見つけられなかっただけです。判断に迷う表現は、専門家や都道府県の薬務担当部署に相談する方法もあります

チェックの記録を残す

生成AIの回答は、会話を消すと残りません。後から「なぜこの表現を採用したのか」を説明できるよう、最低限次の項目を残しましょう。

  • チェック日、担当者、最終判断者
  • 使ったサービス名とプラン
  • 入力した前提情報と広告文(原稿の版も)
  • AIの出力(全文またはスクリーンショット)
  • 各指摘の採用・不採用と、その理由
  • 確認した一次情報のURLと確認日

無料ツール・生成AI・専用ツール・専門家の役割の違い

薬機法チェックの手段は、どれか1つで完結させるより、役割を分けて組み合わせるのが現実的です。

項目 無料チェックツール 汎用の生成AI 広告審査の専用ツール 弁護士・薬事コンサル
主な役割 単語単位のNGワード検出 論点の洗い出し、言い換えのたたき台 広告物単位のチェックと審査業務の管理 個別案件の法的判断
判断の一貫性・記録 ルールが固定なら一定 揺れやすく、記録は自分で残す 履歴機能があれば記録が残る 回答・意見書として残せる
向いている場面 原稿の簡易な自己点検 制作段階のたたき台づくり 原稿の本数が多い、複数人で審査する 新しい訴求、グレーな表現、行政対応

生成AIと無料ツールは「最初のふるい」、専用ツールは「組織で漏れなく審査する仕組み」と考えると整理しやすくなります。専門家は「判断が分かれる案件の最終確認」役です。専用ツールの選び方は「薬機法チェックツールとは?AIでLP・SNS広告を確認する方法」で詳しく解説しています。

社内での使い分けフロー(生成AI→専用ツール→法務・専門家)

生成AIは、社内の広告審査フローの一部として組み込みます。下表のステップ1〜2は、審査フローの「一次チェック」を生成AIと専用ツールの2段に分けたものです。審査フロー・体制の全体像は「広告審査とは?社内の審査フロー・体制・チェック方法と効率化を解説」で解説しています。

ステップ 担当 使うもの ゴール
0. 前提の整理 マーケ・薬事 承認書、届出、エビデンス 商品区分・効能の範囲・媒体を一覧にする
1. 一次チェック 制作・マーケ 生成AI(学習オフ・法人プラン推奨) NG候補と言い換え案のたたき台を作る
2. 網羅チェック 審査担当 専用ツール、社内チェックリスト 画像・動画を含めて見落としを減らす
3. 判断 法務・薬事担当 ステップ1〜2の結果、一次情報 採否を決め、理由を記録する
4. 相談 法務 弁護士・薬事コンサル、行政の相談窓口 新しい訴求やグレーな表現を確認する
5. ナレッジ化 審査担当 自社基準、OK/NG表現集 次回のプロンプトや設定に反映する

ステップ1で生成AIを使うと、制作段階で明らかなNG表現を減らせます。ただし、ステップ2以降を省くと、商品区分の取り違えや画像の見落としがそのまま残ります。ステップ5で判断結果を自社基準にまとめておくと、ステップ1のプロンプトの「前提ルール」にも転用できます。

ステップ2の専用ツールの一例が、アドミルです。画像内の文字や動画のフレームも対象に、NG候補と理由・代替表現を示します。審査基準はプロンプトで自社に合わせて設定できます。AIの指摘は候補として扱い、採否は人が判断します。「いつ・誰が・どう判断したか」は審査履歴として残ります(アドミル サービスサイト、2026年10月4日確認)。生成AIで作ったたたき台を、組織の審査記録として残す工程を担うイメージです。

よくある質問

ChatGPTの回答をそのまま使ってよい?

そのまま使うのはおすすめしません。商品区分や承認内容を踏まえていない、根拠を誤って示す、聞き直すと結論が変わる、といった限界があるためです。OpenAIの利用規約も、出力を専門家の助言の代わりにすべきでないとしています。指摘や言い換え案は候補として扱い、一次情報で確認してから人が採否を決めてください。

無料で薬機法チェックする方法は?

厚生労働省の「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」と原稿を照らし合わせる方法や、生成AIの無料プランで一次チェックする方法(学習利用の設定に注意)があります。いずれも最終判断の代わりにはならないため、迷う表現は都道府県の薬務担当部署の相談窓口も利用しましょう。

AIチェックで違反した場合の責任は?

AIでチェックしたことは、違反の責任を免れる理由になりません。薬機法第66条は「何人も」と定めており、広告主だけでなく、広告を作成・掲載する代理店やアフィリエイターなども対象になりえます。第66条第1項の違反には、課徴金納付命令の制度もあります。課徴金の額は、原則として課徴金対象期間の対価合計額の4.5%です(制度は2021年8月1日施行。第75条の5の2、e-Gov法令検索)。違反した場合の措置や罰則は「薬機法違反とは?広告のNG例・罰則・対策」で解説しています。

ChatGPTに条文を聞けば正確に答えてくれる?

正確とは限りません。条番号や通知名をそれらしく作ってしまうことがあるため、条文はe-Gov法令検索、通知は厚生労働省のページで原文を確認してください。AIには「根拠が不確かなら『要確認』と書く」よう指示しておくと、確認すべき箇所を見分けやすくなります。

景品表示法もChatGPTでチェックできる?

一次チェックの補助としては使えますが、限界は薬機法と同じです。健康食品の広告は薬機法に加えて景品表示法・健康増進法が、化粧品の広告は薬機法に加えて景品表示法が関係します。景品表示法のチェックの考え方は「景表法AIチェックとは?広告表現の確認方法と注意点」をご覧ください。

まとめ:ChatGPTは薬機法チェックの「たたき台」づくりに使う

  • 生成AIは、NG候補の洗い出しや言い換え案づくりなど、一次チェックの補助に向いている
  • 商品区分・承認内容に応じた判断、画像・動画の判断、根拠の正確な引用、判断の一貫性は苦手
  • プロンプトには「商品区分」「承認・届出の効能効果」「媒体」を入れ、最終判断は人が行う前提にする
  • 入力前に学習利用の設定を確認し、出力は一次情報で検証して、記録を残す
  • 生成AI→専用ツール・チェックリスト→法務・専門家、と役割を分けて組み合わせる

広告審査を担当者個人の作業から、組織で記録が残る仕組みに広げたい場合は、アドミルの無料相談もご活用ください。


参考資料

(いずれも2026年10月4日確認)