不動産のおとり広告とは?NG事例・罰則・防止チェックリスト

最終更新日:2026年7月15日

不動産のおとり広告とは、実際には取引できない物件や、取引する意思のない物件を広告に掲載し、問い合わせや来店を促す表示を指します。読み方は「おとりこうこく」です。

たとえば、成約済み物件を削除せずに掲載し続けるケース、実在しない物件を掲載するケース、問い合わせ後に別物件へ誘導する目的で好条件の物件を掲載するケースなどが問題になり得ます。

不動産広告の適否は、文言単体ではなく、物件の実在性、募集状況、取引意思、広告媒体、更新状況、問い合わせ対応、表示全体、前後の文脈によって個別に判断されます。本記事では、不動産会社、広告担当者、Web制作会社、広告代理店が実務で確認すべきポイントを整理します。

読み方も確認

  • 景品表示法 読み方:けいひんひょうじほう
  • 宅地建物取引業法 読み方:たくちたてものとりひきぎょうほう
  • 公正競争規約 読み方:こうせいきょうそうきやく
参考資料(出典):
不動産のおとり広告の3類型と措置命令の根拠は、消費者庁の告示ページで確認できます。
消費者庁「不動産のおとり広告に関する表示」

不動産のおとり広告の3類型を整理した図解

不動産のおとり広告とは?3類型で早見表

不動産のおとり広告は、景品表示法第5条第3号に基づく「不動産のおとり広告に関する表示」や、不動産の表示に関する公正競争規約第21条で問題となる表示です。実務では、次の3類型で整理すると判断しやすくなります。

類型 内容 実務上注意が必要な例
1. 物件が存在しない 実在しないため、実際には取引できない物件の表示 実在しない住所・地番を掲載する、他物件の情報をもとに架空物件を作る
2. 物件は存在するが取引対象になり得ない 成約済みなど、実際には申し込み・契約できない物件の表示 成約済み物件をポータルサイトや自社サイトに掲載し続ける
3. 取引する意思がない 物件は存在するが、広告主に実際に取引へ応じる意思がない表示 問い合わせ後、合理的な理由なく別物件への来店・内見を促す

特に不動産ポータルサイトや自社サイトでは、掲載時点では問題がなくても、成約・申込・募集停止後に削除や更新が遅れることで、おとり広告と評価されるリスクが生じます。故意でなくても、広告管理体制の不備として問題視される可能性があるため注意が必要です。

不動産のおとり広告が問題になる主なルール

不動産のおとり広告は、主に宅地建物取引業法、景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約の観点から確認します。

宅地建物取引業法第32条:誇大広告等の禁止

宅建業法第32条は、宅地建物取引業者が広告を行う際、著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良・有利であると人を誤認させる表示を禁止しています。

国土交通省の通知では、顧客を集めるために売る意思のない物件を広告し、実際には他の物件を販売しようとする「おとり広告」や、実在しない物件等の「虚偽広告」も同条の適用があると整理されています。

景品表示法第5条第3号:指定告示による不当表示

消費者庁は、景品表示法第5条第3号に基づく告示として「不動産のおとり広告に関する表示」を示しています。自己の供給する不動産の取引に顧客を誘引する手段として、取引できない不動産や取引する意思がない不動産について表示することが、不当表示に該当し得ます。

不動産の表示に関する公正競争規約第21条

不動産の表示に関する公正競争規約第21条も、おとり広告を禁止しています。広告主である不動産会社だけでなく、広告制作会社、Web制作会社、広告代理店、運用担当者も、表示内容の正確性を確認する体制づくりに関与することが重要です。

参考資料(出典):
宅建業法第32条、おとり広告・虚偽広告の禁止、景品表示法・公正競争規約との関係は国土交通省通知で確認できます。
国土交通省「いわゆる『おとり広告』等の禁止の徹底について」
不動産公正取引協議会連合会「『おとり広告』の規制概要及びインターネット広告の留意事項」

不動産のおとり広告に関係する宅建業法・景品表示法・公正競争規約の整理図

おとり広告になり得る不動産広告のNG事例

1. 成約済み物件を削除せずに掲載し続ける

もっとも実務で起こりやすいのが、成約済み・募集停止済みの物件をポータルサイトや自社サイトに掲載し続けるケースです。掲載当初に実在していた物件でも、問い合わせ時点で取引できない状態であれば、表示全体や対応状況によっておとり広告と判断される可能性があります。

2. 相場より著しく好条件に見える物件で来店を促す

合理的な根拠なく、相場より安い賃料・価格、過度に好条件の物件として広告し、問い合わせ後に「直前に決まった」「紹介できなくなった」などとして別物件を案内する場合は、取引する意思がない物件への表示として問題になり得ます。

3. 他物件の情報をもとに条件を改ざんする

間取り、面積、賃料、価格、所在地、築年数などを実際と異なる内容にして掲載する行為は、虚偽広告として宅建業法上も問題になり得ます。おとり広告と同時に、誇大広告・不当表示の観点で確認が必要です。

4. 申し込み中・審査中の物件を通常募集のように見せる

申し込み中や審査中の物件については、直ちにすべてが違反になるとは限りません。ただし、実際には新たな申し込みを受け付けていない、内見できない、契約できる見込みが乏しいにもかかわらず通常募集のように見せる場合は、表示全体として問題になる可能性があります。募集ステータスの管理と注記の明確化が重要です。

不動産のおとり広告で注意が必要な例と改善の方向性

媒体別に見る不動産おとり広告の注意点

媒体 起こりやすいリスク 確認ポイント
不動産ポータルサイト 成約済み物件の削除漏れ、更新遅れ 在庫確認の頻度、募集ステータス、掲載停止フロー
自社サイト・LP 古い物件情報の残存、問い合わせ導線との不一致 公開日、更新日、問い合わせ可否、物件詳細との整合性
SNS投稿 投稿後の削除漏れ、固定投稿・ハイライトの残存 募集終了時の削除・追記、投稿文とリンク先の整合性
チラシ・看板 配布後に成約した物件の問い合わせ対応 広告有効期限、掲載時点、代替物件案内時の説明

不動産広告の掲載前後で確認すべきチェックフロー

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不動産広告は、掲載後の更新漏れや媒体ごとの表示差分がリスクになりやすい領域です。公開前だけでなく、公開後の広告も継続的に確認する体制づくりが重要です。
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違反した場合のリスク

不動産のおとり広告は、単なる表記ミスとして軽視できません。事案によって、行政上の措置、業界団体による対応、ポータルサイト上の掲載制限、信用低下などにつながる可能性があります。

景品表示法上のリスク

消費者庁は、景品表示法違反が認められた場合、誤認の排除、再発防止策、今後同様の違反を行わないことなどを命じる措置命令を行うことがあります。

なお、消費者庁の説明では、課徴金納付命令は景品表示法第5条第3号に係るものを除くとされています。ただし、同じ広告内で優良誤認表示や有利誤認表示など別の問題を併発している場合は、個別確認が必要です。

宅建業法上のリスク

宅建業法第32条の誇大広告等の禁止に違反する場合、事案に応じて監督処分等の対象となり得ます。悪質性、故意性、反復性、消費者被害の有無、是正対応の状況などによって判断が変わるため、早期の削除・修正と再発防止策の整備が重要です。

ポータルサイト・業界上のリスク

主要な不動産ポータルサイトでは、広告品質や表示ルールが重視されています。おとり広告と評価される表示が続けば、掲載停止、掲載制限、社内調査、取引先からの信用低下など、集客に直接影響するリスクがあります。

参考資料(出典):
景品表示法違反時の措置命令、課徴金納付命令の考え方は消費者庁の説明で確認できます。
消費者庁「景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?」

不動産会社・広告担当者向けチェックリスト

おとり広告リスクを下げるには、「広告表現を修正する」だけでは不十分です。物件情報の取得、公開、更新、停止、問い合わせ対応までを一連の運用として管理する必要があります。

タイミング 確認項目
掲載前 物件の実在性、募集状況、価格・賃料、間取り、面積、所在地、取引態様を確認する
掲載時 ポータル、自社サイト、SNS、チラシの情報が一致しているか確認する
掲載後 成約、申込、募集停止、条件変更があった場合に速やかに更新・削除する
問い合わせ時 広告物件の取引可否を正確に説明し、別物件案内時は理由を明確にする
定期監査 掲載中物件の棚卸し、削除漏れ、古いLP・SNS投稿・広告バナーの残存を確認する

不動産ポータルサイト掲載時のおとり広告チェックポイント

広告制作・運用担当者が確認すべきポイント

不動産広告では、物件担当者、広告運用担当者、Web制作会社、代理店、SNS担当者など複数の関係者が関わります。リスクを下げるには、誰が最終的に物件ステータスを確認するのか、どの媒体を更新するのか、成約時にどのような連絡フローで広告停止するのかを明確にしておくことが大切です。

  • 物件情報の一次情報をどこで管理しているか
  • 成約・申込・募集停止の情報が広告担当者へ即時共有されるか
  • ポータルサイト、自社サイト、SNS、チラシの更新責任者が決まっているか
  • 問い合わせ対応で、広告物件が紹介できない理由を事実に基づき説明できるか
  • 過去のLP、バナー、SNS固定投稿が残っていないか

消費者が「おとり広告かも」と感じたときの確認方法

消費者側で完全に判断することは難しいものの、同じ物件が長期間掲載され続けている、問い合わせるたびに「直前に決まった」と説明される、相場より極端に好条件である、来店を強く促された後に別物件ばかり案内される、といった場合は注意が必要です。

広告が残っている場合は、掲載画面、URL、掲載日時、問い合わせ内容、事業者からの説明を保存しておくと、相談時の整理に役立ちます。相談先は、消費生活センター、不動産公正取引協議会、宅建業者を所管する行政庁などが考えられます。

よくある質問

Q1. 不動産のおとり広告とは何ですか?

実際には取引できない物件や、取引する意思のない物件を広告に掲載し、顧客を誘引する表示です。代表例は、架空物件、成約済み物件、問い合わせ後に別物件へ誘導する目的の物件表示です。

Q2. 成約済み物件を掲載したままだと必ず違反ですか?

個別判断ですが、成約済みで実際に取引できない物件を速やかに削除せず掲載し続ける行為は、おとり広告と評価されるリスクがあります。媒体を問わず、成約後は速やかな更新・削除が重要です。

Q3. 申し込み中の物件は掲載してもよいですか?

直ちにすべてが問題になるわけではありません。ただし、新たな申し込みや契約が実質的にできない状態で通常募集のように表示すると、誤認を招く可能性があります。ステータス表示や問い合わせ対応を含めて確認が必要です。

Q4. 更新漏れでもおとり広告になりますか?

故意でなくても、消費者に「取引できる物件」と誤認させる表示が残っていれば問題になる可能性があります。更新漏れを防ぐ管理体制が重要です。

Q5. SNS投稿やチラシも対象になりますか?

対象になり得ます。インターネット広告、チラシ、パンフレット、看板、新聞・雑誌広告など、広い表示媒体で確認が必要です。SNS投稿も広告表示として確認する必要があります。

Q6. 広告代理店や制作会社も注意すべきですか?

はい。宅建業法上の主な規制対象は宅建業者ですが、広告制作・運用側も、物件情報の根拠確認や更新フローの整備に関与することが望まれます。特に自社サイト、LP、SNS、バナー広告を制作・運用する場合は、掲載後の情報更新まで含めて確認体制を整えることが重要です。

Q7. 不動産のおとり広告は課徴金の対象ですか?

消費者庁の説明では、課徴金納付命令は景品表示法第5条第3号に係るものを除くとされています。ただし、同じ広告内で優良誤認表示や有利誤認表示など別の問題を併発する場合は、個別に確認が必要です。

Q8. おとり広告リスクを減らすには何から始めるべきですか?

まずは掲載中物件の棚卸し、成約済み・募集停止物件の削除、媒体別の更新担当者の明確化から始めるのが実務的です。そのうえで、公開前チェックと公開後の定期監査を仕組み化することが重要です。

不動産広告の公開前チェックと更新漏れ対策を仕組み化しませんか?

おとり広告リスクは、文言だけでなく、成約状況、媒体差分、問い合わせ導線まで含めて確認する必要があります。属人的な確認に頼ると、更新漏れや古いLPの残存が起こりやすくなります。
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まとめ

不動産のおとり広告は、架空物件、成約済みなど取引できない物件、取引する意思のない物件の表示が中心的なリスクです。特にポータルサイト、自社サイト、SNS、チラシなど複数媒体を使う不動産会社では、掲載後の更新漏れが大きな問題になり得ます。

実務では、広告表現だけでなく、物件ステータスの管理、媒体ごとの更新、問い合わせ対応、公開後の定期監査まで含めて確認することが重要です。適否は表示全体や個別事情によって変わるため、判断に迷う場合は公的資料や専門家に確認しながら、保守的な運用体制を整えましょう。

免責事項:本記事は、不動産広告に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の広告表示について適法性を保証するものではありません。実際の適否は、物件の状態、広告媒体、表示全体、画像、注記、問い合わせ対応、前後文脈、根拠資料などにより個別に判断されます。必要に応じて、所管行政庁、公正取引協議会、弁護士等の専門家にご確認ください。